アニメ「チ。」を見て

おはこんばんにちわ、いまいちリーマンです!
前回の自己紹介だけで終わるつもりはありません。
今回は、たった数日で私の心を完全に奪った作品
『チ。-地球の運動について-』**について語らせてください。

目次:

  1. あらすじ(ネタバレなし)

  2. 各章ごとの簡易まとめ(ネタバレあり)

  3. 感想・心に残ったセリフ

あらすじ(ネタバレなし)

舞台は15世紀ヨーロッパの話。当時は、C教という宗教が信仰の中心となっており、C教の教えに反するものは”異端思想”として犯罪者扱いをされている時代でした。C教では、地球が宇宙の中心とする考え方、いわゆる”天動説”が当たり前となっており、現在は一般的となっている地動説は”異端思想”として罰の対象となっていた時代だったのです。天文学を学ぶことさえ許されませんでした。この時代背景の中で、C教の教えに反して天文学を学び、地動説が正しいことを証明・提唱しようとする人たちのストーリーが「チ。」となっているのです。
物語は、第1章~第4章の4部構成となっており、各章で主人公が入れ替わりながら展開されます。

各章ごとの簡易まとめ(ネタバレあり)

第1章 神童から異端へ

飛び級で大学への進学を認められた神童「ラファウ」が主人公。大学では、最も重要とされていた神学を学ぶことになったが、天文学への情熱を捨てきれずにいた。そんなある日、異端者として捕えられていたフベルトという学者と出会った。ある夜、ラファウはフベルトに山奥に連れて行かれ、そこでフベルトから「地動説」を提唱される。

これが私の研究だ そうだなそれを、『地動説』とでも呼ぼうか
ーフベルトー

ラファウは「地動説」に感銘を受けつつも、研究の継続は危険だとしてフベルトを止めようとする。「地動説が間違っていたら?」「また異端審問官に捕まったら処刑されるよ?」と。しかし、自身の信念に従って生きているフベルトは、止まるはずもなく・・・・。

不正解は無意味を意味しない。怖くない人生などその本質を欠く。
ーフベルトー

フベルトの提唱する「地動説」に感銘を受けたラファウは、その考えがC教の教えに反していると理解しつつも、知的探究心は抑えられなくなっていた。そんな中、フベルトは異端審問官ノヴァクに捕えられ、あえなく処刑される。審問官に連行される際、フベルトはラファウに地動説のその後を託した。天体を模したペンダントと共に。
後日、フベルトの異端思想を受け取ったラファウ捕縛される。「異端裁判で改心を宣言すれば釈放される」とノヴァクから伝えられたが、あろうことか地動説の信仰を宣言。

「宣言します。僕は地動説を信じてます」
ーラファウー

その日の夜、ラファウの行動に衝撃を受けたノヴァクはラファウを訪ねた。何が彼を動かしたのか、、、。どうして宣言しなかったのか、、、。ラファウがフベルトから受け取ったのは、「地動説」だけでなく、「感動そのもの」だったのだろう。その感動を次世代に託す。最終的にラファウは、自身の飲み物に毒を入れて自殺をするのだった。

敵は手強いですよ。あなた方が相手にしてるのは僕じゃない、異端者でもない。
ある種の想像力であり、好奇心であり…。畢竟(ひっきょう)、それは知性だ。
それははやり病のように増殖する、宿主さえ制御不能だ。
一組織が手なずけられるほど、可愛げのあるものじゃない。
フベルトさんは死んで消えた。でも、あの人のくれた感動は今も消えない。
多分、感動は寿命の長さより大切なものだと思う。
だからこの場は…僕の命に代えてでも、この感動を生き残らす 。
(狂気?) 確かに。でもそんなのを”愛”とも言えそうです」
ーラファウー

第2章 自由を求めたオクジー

ラファウの死から10年後、代闘士のオグジーは仕事に気乗りせず早く天国に行くことを望んでいた。ある日、異端者輸送の護衛につくことになったのだが、異端者の言葉に感化され、任務を放棄し、ラファウが残した「地動説」を託されることになってしまう。後日、オグジーは修道士のバデーニを訪ねて、ことの流れを説明。地動説に触れたバデー二は、あまりの衝撃に予想外の行動を見せる。

だけど俺の人生でたった2人…たった2人。
彼等だけが死ぬその瞬間…満足そうな顔をしてた。
今ここにいない人の思いを無視したら、何かが決定的に失われる気がして。歴史というか…
ーオクジーー

(人生が変わる?) いや違う。これは…宇宙が変わるぞ。
まあ、もっと端的に言うと…地球は動いてる
ーバデーニー

バデーニは地動説を証明するべく、協力者を求めて街へと向かい、天文研究所で働くヨレンタと出会う。彼女から天文研究所の所長であるピャスト伯の紹介を受け、天体の観測記録を提供して欲しいと申し出てたところ、ある条件を理由に承諾してもらう。
その条件とは、天動説が正しければ観測できるはずのない天体ー「満ちた金星」を観測すること。

今から俺が見るものは結果がどちらにせよ、宇宙の何かを確定させてしまうんですよね?
気が重いに決まってます。ここ数日間は、俺の人生で最大に謎な期間です。
だけどその中で、1番よく分からないのは…。俺は今、満ちた金星が見たいってことです。
ーオクジーー

「地動説」を完成させたバデーニであったが、異端審問官ノヴァクに目を付けられてしまい、捕縛されてしまう。拷問を受け続けた2人は、ついに自白してしまう。こうしてはるか以前から信念ある者らによって託されてきた地動説の資料は教会に押収され、死刑を宣告される2人であったが、地動説は終わらせないという信念のもと、事前に仕掛けておいた策(乞食の頭にメモを書く)に一縷の希望を託し、2人は去っていったのであった。

つまり俺は、ちょっと前までは早くこの世を出て天国へ行きたかったけど。
今はこの感動を守るために地獄へ行ける。
(地獄の入口?) いや…天界のですよ。
今俺の目の前に広がるこれが、地獄の入口って景色には見えない。
今日のこの空は絶対に…綺麗だ
ーオクジーー

現世に何かを残して、全く知らない他者に投げるのは、私にとってなんら無意味で無価値だ。
しかし不思議なもので、それを無益だと判断しない領域もあるそうだ。
たとえば…”歴史”とやらがそうらしい
ーバデーニー

第3章 僕らは歴史の登場人物ではない

バデーニ、オクジーの悲劇から25年ーー。教会の主流幹部の腐敗が極まり、対抗勢力である「異端解放戦線」が各地の審問所を襲撃して回っており、襲撃した聖堂から書物を奪取することに成功する。その書物には、「地動説」を示唆する文章が書かれていた。ある日、移民の少女ドゥラカは、異端解放戦線が隠していた書物を見つけてしまう。自分が無価値であることを恐れたドゥラカは、本を読んでから書物を燃やすことで、「情報はドゥラカの頭の中だけにある」と交渉を持ちかける。

な…なんだこの本。間違いない…私は今、とんでもないものを見た。
刺激的な内容だ。けど、私の動揺は中身に対してだけじゃない。
この感覚は、もっと大きな何かを問うてる
ードゥラカー

「異端解放戦線」の組織長はヨレンタであり、彼女の目的は本を印刷して「地動説」を世に広まることであった。一方、ノヴァク含めた異端審問官にもその情報が入り、アジトへと迫っていた。1人アジトに残ったヨレンタが選んだのは、自爆ー。「地動説」を守るために選んだ悲しい結末であった。

それと組織の今後…頼んだよ。
この本を…いや、こういうものを出版できるようにするのが私の夢だから。
(なんで?) あなたは若いから。別の言い方で言うと、今はあなた達が歴史の主役だから。
だからあなたに託す 。今を生きる人には、過去の全てが含まれてる。
全歴史が私の背中を押す
ーヨレンター

そして、活版印刷により本はついに完成した。しかし、ノヴァクにアジトを知られてしまい、ドゥラカは本を託された。
なんとか街へと逃げ延びたドゥラカが訪れたのは、教会であった。
司教に取引を持ちかけている最中にノヴァクが踏み込んでくる。ノヴァクは前司教に私恨のために使われていたー。
衝撃の事実を聞いたノヴァクであったが、妄執にとらわれたノヴァクは教会に火をつけて全てを葬ろうとするが、ドゥラカの反撃に合ってしまう。瀕死の重傷を負いながら、ドゥラカは逃げることに成功したのであった。

君や 君が担当した”異端者”達 君らは歴史の登場人物じゃない。
一つだけ聞かせてくれ。君は地動説の何が問題だと思う?
要するに君の考えでは地動説が異端かどうかは
時の権力者の裁量によっていくらでも変わるという訳か
ー司教アントニー

「地動説が異端じゃないと言われて気づいたよ。
まったく予想外だったが、私は…私はこの物語の悪役だったんだ。
ーノヴァクー

 

第4章 地動説が通説に

時は1468年、ポーランド王国都市部ー。青年アルベルトはパン屋で働きながら、天文学にも興味があった。好奇心に満ちたアルベルトは、大人になったラファウが主催する学術サロンに参加する。「真理は発見されるものなのか、それとも作られるものなのか」という問いかけに、アルベルトの目は輝きを増していく。「好奇心こそが最も重要な才能だ」と語るラファウの言葉は、アルベルトの心に火を付けました。が、、、。帰宅したアルベルトが見たのは、倒れた父親とナイフを持つラファウの姿でした。

父は言った。疑えと。
その結果、彼は誰も信頼せず、資料も共有しないで殺された。

ラファウ先生は言った。信じろと。
その結果、彼は自らの信念に従って、殺人もいとわなくなった。

これが、知に関わった者の末路です。
学問やら真理だのは人間には荷が重い。
ーアルベルトー

心に傷を負ったアルベルトが向かったのは、教会。彼に対して、教会の司教は告げます。

どちらか選択する必要がありますか?疑念と信念。2つ持っていて不都合が?
肉体と魂。理性と信仰。哲学と神学。疑うことと信じること。
これらの矛盾は両立します。
なぜか。それが人間だからです。人間は神でも獣でもない。人間はその中間に存在する。
でもだからこそ、中間を、曖昧を、混乱を、受け入れられる。
寧ろ矛盾で理性の息継ぎをする。
ー司教ー

続けて、司教はアルベルトに問います。一体何を捧げれば、全てを知ることができるのか?と。

この世のすべてを知る為に、何を捧げればいいかなんてわからない。
秘匿(とうさん)も排除(せんせい)も、有効じゃなかったことは確かだ。
僕らは足りない。だから補い合える。そうじゃなきゃこの世界には挑めない。
人間は…”社会的(ポリス)な動物”だ。
先生、僕もタウマゼインを感じます。それを肯定し続けます。
貴方とは違ったやり方で、疑いながら進んで。
信じながら戻って。
美しさに、煌めきに、逼(せま)り詰めてみせます。
ーアルベルトー

その後、アルベルトは大学教員となり、天文学の発展に貢献した。
教え子には、コペルニクスがおり、のちに彼が地動説を完成させて世の中に提唱することになったのである。

感想・心に残ったセリフ

フベルトの処刑後、ポトツキに裏切られ捕縛されてしまったラファウ。ノヴァクからは裁判の場で改心を宣言するだけで釈放されると伝えられていたのにも関わらず、地動説の信仰を宣言しました。拷問が始まる前夜、裁判での出来事に関してノヴァクから問われた時のセリフです。

選択が正解か?そりゃ不正解でしょ。でも不正解は無意味を意味しません。
恐ろしい運命? 死の先なんか誰も知りませんよ。ただ、過去の異教徒の言葉は感動できる。
ーラファウー

ラファウは、自分の人生のとって不正解の生き方を選択しました。フベルトのように改心したフリをして生きていくこともできたはずです。しかし彼は、”寿命の長さ”よりも”感動(宇宙がある法則に載っているという合理的な美しさ)”の方が重要だという信念を貫き、自らの死を選びました。物語としては、最終的に「地動説」が本として広まることになったので、”感動を生き残らすことができた”という点では正解になったと言えます。

私自身、その選択が正解や不正解なのかというのは、生が続く限りはわからない、場合によっては死んでも尚わからないという価値観で生きています。よく聞くじゃないですか。富を築いた後に財産を失って、また復活するといったストーリー。その時は不正解だと思っていても、未来の自分にとってはプラスになる出来事かもしれない。過去を変えることはできませんが、未来が過去の出来事の意味を変えていくし、過去は未来を支えてくれる。後のヨレンタが言っていた「全歴史が私の背中を押す」にもつながってくる考え方かもしれません。
私はある意味、「人間万事塞翁が馬」という言葉を信仰しているのかもしれない。

うかつにも憧れて、求めてしまったからだと思います。”自由”を。      ーオクジーー
”自由”なんて聞こえはいいが、規範がないなら獣と変わらないじゃないか   ーノヴァクー
今ある規範を疑えないなら、それも獣と大して変わらない          ーオクジーー

オクジーは、”自由”への渇望が自身の原動力だと語った。
この世に希望なんか無く、絶望しかない。早く死んで天国に行きたいと言っていたオクジー。
しかし、天国より現世を重視した人たちの死に様(笑顔で満足そうに死んでいった)を間近に見た事で、徐々に考え方が変わっていくのが窺える。そして、自分が汚いと思っていた宇宙(これまでの規範通りの宇宙)が、見方を変えれば(規範を破れば)美しくなったことに感動したのだった。

「天動説が全てであり、その他の思想は悪」という統制に対して、ラファウ同様に”感動”を優先したオクジー。規範がなければ獣と変わらないじゃないかと言うノヴァクにも、今の規範を疑えないなら、それも獣と変わらないとカウンターパンチを炸裂させる。ラファウが言っていたように、敵というのはオクジーやバデーニと言った個人ではなく、”自由”への渇望”や”真理の探究心”であり、それは人の”感動”から生まれるということだろうか。一組織で片付けることができるわけもないのである。この”自由”という言葉が持つ意味を我々はしかと考えなければならない。

世の中における自由というのは、無法地帯を意味するものではなく、同じような価値観を所有していることが前提としてあり、個人に対してはある程度の自制を求められるものだからである。この”前提とする価値観”というのは、いわゆる「郷に入っては郷に従え」という言葉に代表されるように、所属するコミュニティー毎で身につけていくものであり、所属してきたコミュニティーの価値観を押し付けるものではないのである。まさに、今の日本が直面しかけている移民問題の背景がこの部分の解釈のズレにあるように思う。人口減少が進んでいく日本にとって、この移民問題は続いていくことになるのだろうが、移民問題を抱える他国と同じ結末を辿らないために、どのような国づくりをしていくのか問われているように思う。

以上

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